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2013年8月24日 (土)

『(株)貧困大国アメリカ』より

 堤未果さんの「貧困大国アメリカ」の第3弾を買ってきた。初めての新書は読んだが、2冊目は読まずで、今回の購入となった。

 今読んでいる途中だが、プロローグの一節が重要だと思われたので、ここに抜き書きしておきたい。

 「一九九二年にカナダ・メキシコとの三国間でNAFTAを結んだとき、政府は農業生産と雇用が拡大し、経済成長で国が豊かになると宣伝した。だが、実際、安い人件費と規制緩和でうなるように儲けたのは、労働者ではなく、多国籍企業のアグリビジネス(農業複合体)と製薬業界だ。カナダでは農家の七割が米国資本に買収され、メキシコではアメリカ製の安い農産物に市場を奪われた農家が次々に倒産、大量の経済難民が国境を越えてアメリカに入国し、最低賃金労働者となりアメリカ人の職を奪った。五〇〇万人の失業者を生んだNAFTAについて、「環境や労働者を守らず、多国籍企業と投資家のみを利する愚策」だと激しく国会で批判したかつてのオバマ上院議員は、NAFTAよりさらに企業寄りの自由貿易条約であるTPPを今、強力に推進中だ。」(新書 15ページより)

 何度も書いているが、社会に変容をもたらす要因として注目すべきは規制緩和と資本行動の自由化である。何でもありにすれば強力な資本はどこへでも行き、脆弱な経営を潰してしまう。日本でも同じことが起きうるし、すでに起こっている。労働市場の自由化は非正規社員の大量発生を招いた。安い労働力を大量に生んだということだ。TPPの推進は、NAFTAで起こったことを再現するだろう。

 ところで、アメリカの農業の工場化は恐ろしいものがある。鶏をぎゅうぎゅう詰めに押し込んで、抗生物質を与え、成長剤を飲ませる。肉の量は異常に増加するが、内臓や骨の成長が追いつかない。体重を支えきれずに骨折をする鳥が多いそうだ。これはステロイドを使ったボディビルダーに似ている。また、鶏同士が互いに突っつきあうようになるので口ばしを切るそうだ。やり方が徹底している。こういうところで食の安全が確保されることはない。

 遺伝子組み換え作物も怖い話だ。安全性に問題があるかもしれない。危険性を指摘する研究論文は政治的に潰されているそうだ。政府の中枢に関連企業に関係する人物が配置されているのだから、消費者寄りの政策が実施されるはずがない。オバマも政治資金でそれまでの政治信念を売ってしまったのである。

 アメリカ産の肉類に注意しなければならない。牛肉の輸入制限も緩和されたからますます危険になる。そういえば吉野家の牛丼はアメリカ産だった。穀類は輸入品を食べざるをえないが、肉類は避けたい。しかし、経済力がないものは安いものを食べざるをえない。そうすると自ずと輸入品にぶつかるのである。安いからいいではないかという考えもあるが、安い背景には様々な犠牲や危険が横たわっているのである。

 安全、安心は食の分野でもお金で買えるものになった。中国の富裕層は自国産のものを避けているようだ。

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