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2012年3月24日 (土)

20世紀以降の世界(アメリカを中心に見て)

 社会主義国がまだ健全であり、経済的な面でも労働者の要求を満たしていた時代には、資本主義の世界でアメリカは対抗的にそれ以上の価値を実現する使命を担っていた。自由と民主主義を保障し、物質的な豊かさを西側の世界に見せつける必要があった

 第二次世界大戦において、日独伊等の枢軸国に対し、圧倒的な生産力をもって連合国の中心的役割を果たしたことはアメリカの地位を大いに押し上げた。ソ連も同じように力を伸ばしたが、西側では圧倒的な優位に立った。

 だから、アメリカには盟主としての政治的道徳的権威が生じる基盤があったのである。戦後しばらくの間はアメリカにとってよき時代であった。しかし、ベトナム戦争が始まり、そこでの失敗はそれまでに築いた権威を失墜させていった。

 ところが、ソ連が崩壊したことにより、資本主義の勝利が宣言され(その評価が正しいかどうかは別として)、ことさらその価値を宣伝し、実際に表わして見せる必要もなくなったのである。それから、アメリカとアメリカの巨大資本は道徳的な装いを投げ捨て、利益の露骨な追求に専念し始めた。これこそグローバリズムの背景である。

 東の盟主であったソ連がいなくなったことで、強力な敵国はいなくなった。それはアメリカの自由を増すことになったのだが、そこに負の要素がなかったわけではない。敵国が少なくなれば、厚い軍備を持つ必要がなくなる。それは軍需産業の仕事を減らすことになる。アメリカの政権はある意味軍需産業に支えられている。困ったことだが、テロリズムが口実を与えた。テロには社会主義のような理論や大義名分もないので、対抗のための武装化にあれこれ理屈を付ける必要もない。

 このようにアメリカも変わってきたのだが、変わったのはアメリカだけではなく、他の国や地域も変わっていくのである。だからアメリカの思い通りには進まない。一番大きなインパクトは中国の経済的発展である。実はこれもソ連の崩壊が引き金になったと考えられる。中国の指導者たちは、ある意味利口だったのである。この選択を抜きにして生き残りはなかった。それをやれない北朝鮮の崩壊は時間の問題だ。ただし、中国が、日米へのけん制として今のまま残しておきたい思惑があるから、まだしばらくは生き延びるだろうという予想がある。

 今後、アジアを中心として経済的発展が進めばアメリカの相対的な地位はさらに低下するだろう。しかし、手をこまぬいてはいない。
 ①移民を流入させて成長の基盤を維持する。
 ②「敵国」を作りながら軍事的地位を維持する。
 ③基軸通貨としてのドルを防衛する。
 ④投資銀行などの大企業が世界で動きやすいように「自由」市場を広げていく。
 ⑤アメリカ的なやり方やシステムは、公平で「いい」システムであると各国の政治家や学者に宣伝する。

 以上のような策を弄して盟主としての立場を維持しようとするだろう。

 たとえばTPPもその文脈で考えれば分かりやすい。アメリカは日本や他の国の利益を考えて動いているわけではない。これはだれでも思うことだろう。
 アメリカがすでに持ちこみ、さらに拡大しようとするシステムが日本の国民の利益にはつながらず、他のアジアの国々の国民の利益にならないのであれば、それを拒否しなければならない。「自由」な経済活動というものはない。活動にはルールが必要である。小さな町の市場ならともかく世界の国家や企業や個人が取引するのにルールなしで動くはずがない。スポーツを考えても分かる様に、ルールの設定を変えてしまえば勝敗の結果が変わってしまう。要は、だれに都合のよいルールなのかという問題だ。これがリアルな歴史の見方ではないか。

 素人の歴史観だが、歴史を見れば今が分かるという理屈は正しいようだ。

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コメント

私は、消費者のニーズにまともに向き合っている企業は生き残ると思います。いわゆる「実業」を営む企業はその存在価値をなくすことはないのではないでしょうか。

> 素人の歴史観
いや、なかなかのものです。自由化・グローバリゼーションがアメリカの覇権主義の賜物だということを再認識しました。
しかし、もはやグローバル化に対応できない企業(とくに大企業)は生き残れない状況になっていることもまた事実だと思います。

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