« 生活保護について | トップページ | Kさんのこと »

2012年1月28日 (土)

中堅企業における人事評価制度について考える

  一定の規模になれば、人事評価制度を導入する企業が多い。私の会社も数年前に制度を作り運用を始めている。

 当然制度には目的がある。その目的のために制度は有効に運用されなければならない。しかし、往々にして目的が忘れ去られ、ただ形式に従って評価する(点数をつける)だけに終わってしまう。

 目的の第一は、人材の育成である。大企業と違って中堅の企業には始めから特別に優秀な人材が集まることはない。最近は就職難で、以前なら採れないレベルの学生も入ってくるようになったが、それでもAクラスの人材とは言えないのである。
 だから、入ってから育てることが重要であり、その成否が企業の行く末を左右するのである。人材育成の重要性は大企業よりも大きいと言って間違いないだろう。

 目的の第二は、競争原理を一定の範囲内で働かせ、社員のやる気を引き出すことである。私の会社では報酬への反映は上位職に限られ、また賞与部分だけなので、ごく限定的である。しかし、昇格を決める際の判断基準に結果として出た点数を使っており、上手く運用すればその目的を果たすことができると考えている。

 始めにも書いたとおり、運用の仕方が悪いと制度が形骸化する。時期が来れば評価シートを作成し、次の時期が来ると結果に対し評価する。(評価するというのは点数をつけるという意味だ。)その間は、ほとんど何もしない。そして、点数に基づき、昇格者(もしくはその候補者)を決めるのである。

 二つの目的のうち、後者についてはいくらか結果が出ているように思うが、前者は全く不十分である。いや、後者についても制度が機能しているとは言い難い。それは、結論を言えば、評価シートの作り方が拙いからだ。各人の課題は、その資格に照らして妥当なレベルの課題を設定しなければならない。リーダーという資格にある者は、リーダーに相応しい量と質を持った課題に取り組むべきである。ところが、まずここにばらつきが生じる。リーダーであるのに、それより下の一般の社員がやる課題を上げている場合がある。なかには一つぐらい混じっていてもよいが、そんなやさしい課題ばかりでは力量が上がっていくはずもない。

 課題には、難易度が設定される。その社員の資格に対して妥当なレベルであれば「B」、上の資格に対応する場合は「A」、下の場合は「C」である。当然「B」の課題が中心になり、「A」と「C」が一部含まれるという状態が望ましい。社員を成長させたいなら、「A」の課題に積極的にチャレンジすべきである。

 根本的な考え方は、会社の目標を達成するために必要な課題は、細分化して、資格に応じて社員一人ひとりに背負ってもらうことなのだ。一人ひとりが期待通りに課題を完結すれば、会社の目標は達成されるはずである。制度はそういう構造になっている。しかし、現実には多くの社員が高い点数を取っているのに会社の課題は未達成なのだ。

 課題設定が適切でない。その社員の資格ではなく、現在のその者の力に合わせた課題になっている。力にあった資格が付与されていればよいが、制度移行の時にそれまでの社内のポジションを考慮している。年齢が高いとある程度の資格に位置づけられてしまうのだ。力が足りないから、その資格に相応しい課題を要求することができないのである。しかし、制度の趣旨からすれば要求しなければならない。そしてできるように上司は指導しなければならない。どうしてもできないならば、難易度「C」の課題を並べるしかない。そうすると、やりきっても高い点数は付かないから、この結果を本人に受け入れてもらうしかない。

 また部門自体が伝統的に挑戦的な目標を掲げてこなかったという要因もある。確かに、現業部門には現場作業ができる人材を充ててきたので、正味の力量は伸びにくいという事情がある。あるのだが、資格は他の部門と同じように上がってきたのである。これは会社の歴史の結果であるから、これを一気に破棄することはできない。大事なのはこれからのことである。

 あまい課題を与え、あまい難易度を設定すれば自ずと高い点数が付いてしまう。チャレンジしなければ人は成長しない。資格に相応しい課題を上げてチャレンジさせる。上司はとことん指導する。そして他の部門の同じ資格の者と同じレベルの仕事をさせるのである。そうしなければ、他の部門とのバランスがとれない。厳しい要求を突き付けられている社員にしてみればこのアンバランスは納得できない現実であろう。

 もう一つ、問題点を上げておこう。それは結果の判定基準である。課題の達成基準はできるだけ定量的に設定し、結果の幅と対応する点数を決めておく。二つ以上の目標がある場合はそれぞれのウエイトを決めておく。これがないと判定に主観が入り込んでしまう。よく頑張ったから高めに付けておいてやろうというような温情が生まれる。しかし、あくまで客観的な結果でしか評価してはならない。制度は、枠外でいくらか加点できるようになっているので、そこで考慮すればよい。原則を踏み外してはならないのだ。

 以上のように運用上さまざまな問題点がある。要は、制度が軽んじられているのである。運用がいい加減であれば、所期の目的が果たされないだけではなく、上司と部下の信頼関係がゆらぐ。また、部門間の不信感をも招く。それは組織の弱体化につながるゆゆしき問題なのだ。人事評価制度とはそれだけ重要な制度であることを改めて認識しよう。

« 生活保護について | トップページ | Kさんのこと »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 生活保護について | トップページ | Kさんのこと »