« 命を投げ出す行為について | トップページ | 生活保護について »

2012年1月21日 (土)

「幻のバイブル」 藤井利香 日刊スポーツ出版社刊

 和歌山市にある進学塾KGセミナーの塾長山下先生から教えていただいた本を紹介します。山内政治という男性の生涯を描いたノンフィクションです。

 山内政治(やまうちまさはる)さんは1959年彦根市に生まれ、2009年2月11日に急逝しました。享年49歳でした。彦根東高校で野球に打ち込み、一浪して早稲田大学に進みます。私より一つ年下ですが、二年遅れた私と大学では同級生だったことになります。同じ時期に在学し、神宮でよく観戦した野球部に所属していたということから親しみを覚えます。私の会社の工場が彦根市の近くにあることから、その点でも近しい感じがします。

 この本は、前半が山内さんの野球人生であり、後半が化学物質過敏症という難病の妻を持った山内さんの悲劇が描かれています。前半が「明」なら後半は「暗」。まったく違う二つの話が同居しているのです。前半部分だけなら一人の個性的な野球選手、そして野球指導者の物語で終わっていました。それはそれで野球ファンにとっては面白い読み物になっていたと思いますが、続く後半の展開は野球ファンの興味を超え、人間にとって避けがたい運命というものを感じさせるのです。藤井さんの文章は前半は少し読みづらい感じがします。しかし、後半は一転して悲劇に襲われた山内さんの涙のように文章が流れていきます。そして読む者の涙も誘うのです。

 山内さんの奥さんは、大学卒業後山内さんが勤めていた学習塾の生徒でした。10歳も年下の中学生だったのにその時からずっと山内さんを思い続けていたそうです。再会して結ばれるのですが、この出会いが二人の運命を、いや正確には山内さんの運命を決するのです。奥さんが山内さんを求めた理由は何だったのか。単なる相性の問題であったのか。将来の難病を予期させる何かがあって、自分を一番守ってくれる相手を本能的に選んでいたのかもしれません。それを受け止めざるをえなかったことが山内さんの悲劇であったのです。

 詳しくは本をお読みください。もう少し生きてほしかったと誰もが思うことでしょう。そして今ある命を、人生を、もっと大事に生きようと思うに違いありません。

« 命を投げ出す行為について | トップページ | 生活保護について »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 命を投げ出す行為について | トップページ | 生活保護について »