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2011年8月11日 (木)

偏見を打ち砕くもの

 へんけん【偏見】 大辞林より

  •  かたよった見方・考え方。ある集団や個人に対して、客観的な根拠なしにいだかれる非好意的な先入観や判断。「―を持つ」「人種的―」

     会社の後輩たちと話をしているときに、偏見についての話題が出て、その例として「胸の大きな女性は頭が悪い」という見方を上げた。これは青年が集まって女性について語る時にしばしば口にされる説である。

     これはおそらく偏見であろう。正しいというのなら、そのことを証明しなければならない。そのためには、まず胸の大きさは何をもって測るのか。体積か、重量か、絶対的な大きさか、相対的な大きさか(体の大きな女性は自ずと胸も大きくなる傾向にあるのだから)。次に頭の良さ悪さをいかに定義するのかという問題がある。
     そして、この二つの要素の関係の問題である。追究の仕方としては、一つは医学的な究明がありうる。乳房の発達と脳の発達との関係を医学的に説明できるのかどうか。一方では、統計学的な究明もありうる。何百人かの女性を検体に選び、「胸の大きさ」とIQとを記録する。この二つに強い相関があるのかどうか見るのである。

     このような追究を行えば、先ほどの説が真か否かが検証される。確かな根拠を持った言説でなければ信用はできない。ただし、上記のような、大した意味がないのに金と時間のかかる検証を行う奇特な人物も組織もあるまい。個人的な興味に基づいて確かめようと思うならば、何十人という女性とつき合わなければならない。それぐらいやれば、一定の確かさをもった結論に至るであろう。経験の豊かさは、賢明な結論を導き出す大きな要素に違いない。

     人間の行動は、根拠ある認識に導かれる必要がある。「胸の大きな女性は頭が悪い」という説は明らかに偏見であろうが、そのような偏見が生まれやすくさせている背景はなんなのか。こんなことを考えさせるのは若い男の嗜好にあるように思われる。青年は、他の条件が同一だとすれば、より胸の大きな女性を求める。女性についてその心理的特性を理解しないうちは、ただ外見に触発されるのである(これも野蛮な偏見か)。では、胸の大きな女性について話題が湧きあがるのは分かるとして、それが頭が悪いという見かたに通じてしまう原因は?これも青年特有の劣等感ではないだろうか。女性を知らぬことへの負い目である。頭のよい女と対等につきあう自信がないのである。だから、頭の悪い女性を求めたがる。

     事実の追究、冷静な観察、合理的な判断。こういったものが、総じて正しい行動を生みだす。しかしながら、実際には、こういったものとは関係なく人間の行動は行われる。冷静な観察に基づけば、男と女はかくも安易にくっついたり離れたりしないであろう。種の保存のために一定の量の男女の接触が必要ならば、青年の暴走もまたそれを支える必須の条件と言える。
     とはいえ、社会的な問題を考えると、そんな冗談じみた現象だけを取り上げている場合ではない。偏見をうまく利用したデマゴーグの暗躍は阻止したい。言葉のトリックを見破るだけの知力を、現代人は身につけねばならないと私は思う。

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