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2011年8月12日 (金)

どですかでん(黒沢明監督)

 原作は山本周五郎の「季節のない街」である。原作を先に読んでいたせいで、この映画の良さは、原作に描かれている個性的で愛すべき人物を活き活きと映像に持ち込んだ点にあると思われた。山本周五郎無くして、この作品はない。

 「電車ばか」の六ちゃん。足が悪く、顔面神経痙攣のある島さん。連れ合いを互いに交換してしまった河口夫妻と増田夫妻。泥棒に自ら有り金すべてを渡してしまうたんば老人。姪のかつ子を妊娠させて、それが問題になりはじめると慌てて逃げ出した綿中京太。

 どこかにモデルがあったのかどうか知らないが、六ちゃんや島さんの人物像は容易に考えつくものではない。「どですかでん、どですかでん」と、貧しい人々が暮らす街を決まった時間に電車を走らせる六ちゃん。周りの人には六ちゃんしか見えないが、六ちゃんは実物の電車を動かしているのだ。
 島さんには怖い奥さんがいる。体がでかくて、無愛想で、乱暴だ。ある時、島さんが会社の同僚を3人連れて帰る。奥さんは挨拶もしない。そして客を残して風呂屋に行ってしまう。同僚の一人が我慢ならず、なんだあの女はと怒り出す。島さんは済まないと謝るが、同僚は君を責めているのではない、あくまであの女が悪いと訴える。すると、今度は島さんが怒り出す。同僚につかみかかり、僕のワイフが君に何をしたというのか、何もしていないのに叩きだせとはなにごとか、知らないだろうが、ワイフは水を飲んで空腹をしのぎ貧乏に耐えてくれたのだ、とたたみかける。ここは、もっとも印象的なシーンの一つである。

 芸達者な役者がそろっているが、一人名前を上げるとすれば、田中邦衛だ。チンピラまがいの兄さんの役はうってつけであり、酔っ払ったところの演技は、これ以上のものは望むべくもない最高のものである。

 (この映画を見て、私は男の愚かしさと女の強さ・偉大さを見てとった。男とはなんと気ままで、小心で、愚かであるか。)

 

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