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2011年8月19日 (金)

風評被害について考える

 行動を決するには事実をもって判断しなければならない。これが基本である。一方で、「世間の評判」というものがある。あの会社はケチだとか、あの病院の診療は信用できないとか、あそこのレストランはなかなか味がいいとかいう類のものである。自分で直接経験していれば事実の一端に触れているのだが、伝聞の範囲ではその情報に関する事実の確認はないわけで、そのような評判があるという事実だけ認知するのみである。それにしても、先ほど上げた評判は、一定の地域で一定の期間醸成された認識であって、まんざら無根拠でもない。けっこう信ぴょう性はあると言ってよいのである。

 ところで、「風評」というものは、それとは性格を異にしている。
 思い起こせば、O-157大腸菌による食中毒の原因がカイワレ大根だと報じられて全く売れなくなった。しかし、その後も原因は特定されていない。その他、鳥インフルエンザの関係で鶏肉が売れなくなったこともあったし、ナホトカ号の重油流出事故で山陰のカニ目当ての旅行客が激減したり、豊田通商やオウム真理教の事件で名前の似通った団体がその活動に影響を受けたりした。

 これらの「風評」による被害は一つひとつ見ていくと、必ずしも同じ原因によるものではないように思われる。カイワレの場合は、政府の発表が軽率であった。早く事態を沈静化したいという思いが焦りを生んだのではないか。気の毒なのはカイワレ生産者であり、市場が小さく有力な企業もないので泣き寝入りせざるを得なかったのだろう。鳥インフルエンザについては、インフルエンザと鶏肉の安全性との関係についての情報が十分に流されなかったのではないか。また、鶏肉を取り扱う業者も敢えて流れに抗することをせず、販売を手控えてしまったのではないか。重油流出の場合は、これもカニに対する影響の正しい評価が積極的に報じられなかったこともあるし、おそらくそれ以上に、厳しい条件のなかでボランティアが必死に除去作業をしている状況のなか、消費者は自分たちが暖かい部屋で贅沢な鍋を食することに罪悪感を覚えたに違いない。これは自粛による現象と考えられる。

 整理してみると、まず情報の適切な出し方の大切さが分かる。遅れるのはよくないが、不正確なまま発表を急いでは誤った認識を招く。次に、必ず情報の通り道になるマスコミの姿勢である。単に確認できた事実だけを報ずるのではなく、発生するであろう誤解を積極的に打ち消す報道姿勢が望まれる。また、マスコミに続いて、関連する商品を扱う業者も、購入先を慮って積極的に販売する姿勢を出すべきだ。これは単に商売だけの問題ではない。最後に、消費者も、事実を科学的に理解し行動する努力をすべきだし、人が苦しんでいる時にはある程度足が止まることは仕方ないにしても、自粛一辺倒ではなく、普通の消費行動は被害者の害にはならないし、非人道的でもないことを理解すべきである。

 吉野家の安倍さんが、放射能汚染による牛丼への風評被害を心配していたが、肉はアメリカ産で、米は北海道産なので全く問題ないと思う。よしんば東北産であっても検査をしっかりやる体制があれば問題ない。安全を保証する体制を持つ企業があり、消費者が合理的な行動をとるならば風評など恐れるものではない。

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