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2011年7月10日 (日)

人間世界概観

 現在の人類の祖先は10万年ほど前にアフリカに住んでいた一集団であったとする説が有力になっている。その一部がアフリカを出て、世界中に広がっていったというのである。この説では、日本列島に人類が到達したのは早ければ5万年前になるという。残念ながら日本の土壌が強い酸性であることからそこまで古い人骨は出土しておらず、その説の裏付けはないらしい。単一の起源から説明ができるので分かりやすい説であるが、それを証明する物が十分にそろっておらず、時間の経過から考えて今後も難しいだろうと考えると、あくまで有力な説ということで受け取られるのだろう。

 さて、各地域に散らばった人類は、農耕の知恵と技術を得て5~6千年前には大掛かりな「文明」を築きあげるにまで至った。その後の変化はおしなべて緩やかなものだったと思われるが、うちに支配被支配の関係を含みつつ生産の仕組みと諸制度を構築して社会を維持発展させてきた。そして、近代における工業化の著しい進展は一気に生産力を増大させ、人口を爆発的に増加させた。また、今日に至るまで市場経済を世界中へ飽くことなく伝播させている。

 人類史の進展は、食料を始めとして生活に必要なものの生産を基礎においていることは否定すべくもない事実であるが、近代にいたるまでは政治が前面に出た社会だった。暴力的な強制力と宗教的あるいは道徳的な権威とが支配していた。ところが市場経済が膨張し始めると、それにともなって貨幣(資本)の持つ権力が幅を利かせるようになる。
 お金は力である。政治までも買えるという意味では万能の力であると言えるだろう。人間は物を手に入れるための手段としてお金を欲しがるのではなく、お金そのものの魔力に取りつかれ、お金そのものを欲するようになる。お金に対する考え方は人それぞれであり、一様ではないが、お金がないとたちまち生活が立ちいかなくなる現実は誰にも当てはまるものである。
 基本は手元にあるお金の範囲で生活を営むことであろうが、足りない分は借り入れて手当てすることになる。借りるお金と引き換えるものは自分の将来であり、もっと具体的に言えば労働である。借りると利子が付くから、自分の将来の労働を安売りしているとも言える。所得の増大が期待される局面あるいはそういう個人はいいけれども、そうでなければどんどん苦境に追い込まれることになる。お金ほど魅力的であるものはない反面、お金ほど恐ろしいものはない。

 お金が世界を支配している。中国が経済的に著しい成長を遂げているが、国が直接資本を所有しているという面では中国国家の権力は絶大である。今後どうなるか分からないが、まずます力を持つことになろうし、日本のお金をも大量に保有することになるだろう。影響力はすさまじい。隣国として尊重する気持ちはあるが、その動静は能天気に眺めていられるものではない。

 とはいえ、お金の力は絶大であるとしても、唯一の力ではない。資本の行動に対して、対抗する力が働く。それは自然を守る運動であったり、反公害闘争であったり、企業の進出を阻止する運動だったりする。グローバリズムの本質が資本行動の自由化であるならば、人間の尊厳を守る立場からそれに対抗して規制を要求するのが反グローバリズムの本質であろう。市場経済の有効性を認めるとしても、それが万能であるとは誰であろうとも認め得ない。だから、市場の原理に対抗するロジックが必要なのであり、そのロジックが貫徹されるシステムが必要なのである。

 その対抗するシステムとは、少なくとも今の段階では大それたものではないだろう。マルクスやレーニンの考えた社会主義は、資本の持つ巨大な力を労働者階級のコントロール下に置こうとしたが、それはいくつかの理由で挫折した。政治権力を通じた社会の改変はいまだに必要であろうし、有効性を疑うのでもないが、それとは別の、市民のレベルで、市民の置かれた立場で、許容できないものへのノーの声を上げなければならない。

 見返りを求めない無償の行為がありうるだろう。与えるばかりでは供給過剰になるのではないかなどという近代経済学の次元での心配は無用である。世の中には、年齢から、身体的理由から、あるいは他の理由から与えられなければ生き続けることができない人たちが思う以上にいるのであり、そういう事情からすればバランスはとれる。もともと古い共同体が持っていた互助の精神が、市場経済のシステムの足り部分を補完しつつ、本体を侵食していくことが必要なのだ。

 気の遠くなるような話だが、工業化が驚くほどのスピードで進んだ結果、そのネガティブな面の露見も早かったし、その見直しもゆっくりとはしていられないだろう。

 意外に、変わる時は、予想以上に変わることがありうるのである。

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