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2011年7月 8日 (金)

「砂丘」

 高校の時に文芸部に入っており、その時に発行していた雑誌が「砂丘」というタイトルだった。ガリ版刷りの粗末なもので、詩を中心に書いていたが、おそらくひどい内容だったに違いない。

 文芸部員は面白いことに私の年代はほとんどが男子で、下の学年は大半が女性であった。過半数が女性で、ある意味恵まれた環境にあったわけだが、なにぶんにも田舎の学校だから垢ぬけた女性はいなかった。もっとも男子も同じ環境にいたので、女子から見たら格好のいい男はいなかった。

 ときどきハイキングに出かけたりした。なかでも相賀の魚飛渓が思い出深い。JRの駅からかなりの距離を歩いた気がするが、そこには巨大な岩があり、その間を清流が流れ、足を浸すと冷たかった。一晩キャンプをし、どこに恐怖があるのか分からないが男女ペアで肝試しなるものを行ったりして楽しんだ。特にハプニングも起こらず終わった。このときに限らず、男女が集まればそれなりの感情や関係が生まれそうなものだが、そうならなかったのは生真面目な青年ばかりだったのと、集団に暗黙の規律が存在していたからだろう。ペアがひと組できるだけで調和が崩れたりするものだ。

 文芸部とはいいながら、たまに「砂丘」を作るだけで、文学の香りはなかった。本を読んでいないことはなかったが、議論を戦わせるだけの自論ができてもいなかったし、相手もいなかった。幸いにも公認の部であれば部室が用意され、そのことで、他愛のない話ではあっても会話の場が確保された。このことが最大のメリットだったと思う。

 あれから会わぬ者も多いが、今どうしているだろうか。あのころのありふれた男女の塊は、砂丘の中の一握りの砂であった。

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