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2011年2月12日 (土)

愛妻物語

 新藤兼人の第一回監督作品である。以前購入したDVDを今日始めて観た。地味な作品で、物語は淡々と進んでいくが、しんみりと心に残る作品である。宇野重吉のせりふは素朴さのただよう自然なものでよいし、乙羽信子には初々しさがあってよい。新藤にとっては自らの体験を描いたものだが、高ぶらず抑制のきいた撮り方になっていると思う。

 敗戦から間もない時期の作品なので、戦時中の風俗もリアルに描かれていると思われる。酒の配給、学徒出陣を見送る人々、映画会社の人員整理、空襲警報などなど。主人公夫婦の生活はとても質素で、小さなお膳にはふた組の茶碗と箸が置かれているだけである。そんな暮らしでも二人には幸福があった。貧しさは決して肯定的にとらえてはならないが、幸福の形には様々あるのだということは言いうる。夢に向かって生きることの意味は、人間存在にとって切り離せないテーマである。

 この映画を観ると、新藤がなぜ老いてもシナリオを書き続けたのかが分かるし、乙羽信子が新藤について行った理由も分かる。昨日のブログで、たいていの人は過去を振り返ったときに「もっとできたはずだ」と後悔すると書いたが、新藤には後悔はないだろう。

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