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2010年11月23日 (火)

お客様目線

 今、経営の在り方について論じられるとき、「お客様目線」という考え方が持ちだされることが目立って多くなっている。同じ意味で顧客第一とか顧客重視とか言われることも多い。この考え方は経営にとって核心的な意義を持つが、企業で働く従業員の働き方や働きがいを考える場合にも重要な観点になってくる。

 私の勤務する企業では、ある種の消費財を製造販売している。国内における需要縮小の影響で業績を伸ばすことは容易でないが、そのなかでも地道に成長してきたと言えるだろう。その要因は、経営理念の具体的実践であり、経営と従業員がともにその点で努力をしてきたからである。しかし、社会の変化がスピードを増し、また変化のスケールがよりグローバルになるに従い、これまでの努力では補いきれない事態を招きつつあるのも事実だ。

 「お客様目線」に戻ろう。われわれは、毎日決まったように出社し、決まったように仕事をこなしていく。そして決まった日に給料を受け取る。当たり前のようにそれを繰り返しているので、その中身についてじっくり考えてみる機会は少ないのではなかろうか。まず、自分の仕事が生み出している価値はどれほどのものだろうか。改めて考えると、見当がつかない。とりあえずそれを測る手段は受け取っている給料の額になってしまうだろう。しかし、厳密に言えば、毎月給料は一定であっても生み出す価値は一定ではないだろうし、人による差も当然ある。この人による差は、従業員を評価する場合に頭を悩ませる事案となる。評価する尺度には様々な要素があって、それはいくつかの異なる価値観に対応するものだからだ。
 さて、われわれは仕事をすれば即価値を生み出していると思いこんでいるが、本当にそうだろうか。商品を企画する部門は売れるであろう商品を企画する。しかし企画を考えた時点ではなんらの価値も実現していない。ただ費用を使っただけである。企画した商品がお客様のところに届き、代金を受け取って初めて仕事の成果としての価値(利益)が実現する。経営に関する本を読むと、よく「利益は外部からもたらされる」と書いてあるが、それは今書いたことを意味している。「給料はお客様から頂いている」という言い方も聞くことがあるが同じ意味で理解できる。
 同様に、商品を開発する仕事も、工場で生産する仕事も、販売を企画する仕事も、広く経営を企画する仕事も、みな市場における商品の購入を通して価値を生み出すのである。工場で商品を一所懸命作っても、それを倉庫に積んだだけでは何の役にも立たないのだ。営業の場合は商品を売ること自体が仕事だから直接的で分かりやすい。下品な言い方だが、売ってなんぼの世界である。
 もうひとつ念のために付け加えると、今実現した価値は、それを販売した営業だけの成果ではなく、他の部門の仕事の成果でもあり、また過去の仕事の成果でもあるということだ。したがって、今急に頑張ったからといって突然利益が上がりだすようなことはない。

 今一度、自分の仕事を振り返ってみたとき、それが自社の商品をお客様に買っていただくことにどのようにつながっているのか明確だろうか。全体としてとらえた場合に漠然とした答えが出たとしても、個々の仕事の意義については答えられないのではないか。お客様の立場から見て本当に必要か、あるいは正しいやり方か。また、お客様を満足させる仕事か、逆に不満を招くような仕事になっているのではないかと考える必要がある。

 人間の行動には慣れや惰性が付きまとう。それに打ち勝つのは日々の具体的で意識的な行動である。そのエネルギーを引き出すためには、お客様の姿がよく見えることが必要となる。

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