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2010年8月25日 (水)

唯川恵 「肩ごしの恋人」

 唯川さんの小説は初めてだ。恋愛小説の名手と言われるからどれほどのものかという興味で読む。読むなら無難なところで直木賞受賞作の「肩ごしの恋人」だ。
 
 読んでいくと、面白い。面白いけれども、最初からそう言ってしまっては身も蓋もないが、この一冊で十分という感じがした。中年のおじさんにとっては、ここに出てくる女性はよく言えば奔放だが、悪く言えばわがままであり、手に負えないのである。もちろん、これは娯楽小説であり、まじめて規律正しい人間ばかり登場させたのでは「お話」にならない。こんな女性って、ここまではっきりした女性っていないよねという感じで、一度こんなに奔放に振る舞ってみたいという願望を一時的に満たしてくれるのであろう。
 読者は大半が若い女性ではないか。他の作品を読んだことはないが、主人公は女性だろうし、その主人公に男性たちは翻弄されるのだから男としてはしっくりこないものがある。「肩ごしの恋人」でも、出ている大人の男性はまじめで気弱なところがある。これが少々傲慢でぐいぐい引っ張っていく男だったら、萌やるり子の出る幕がなくなってしまう。そういう設定がベースにあるのだったら、男としてはやはり飽きが来るに違いないのだ。

 この作品自体はよく出来ていると思う。なかでも崇という名の家出少年が話を面白くしている。実際にこんな賢い15歳はいないと思うが、そのみずみずしさが少しくたびれかけた女性に力を与えている。また最後の結末もこの少年が準備をすることになる。
 面白い小説でも、最後はなかなか難しものだ。途中は充実していて、次はどうなる次はどうなると読み進んでいくのだが、その割に最後があっけない小説は意外と多い。書き手はいろいろ悩み迷った挙句に結末を創りこむと思うのだが、読者を納得させるのは容易ではない。そんななかでは、これは比較的上手く終わらせている。萌が崇の子を身ごもったこと。そして萌が崇に内緒で生もうと決意するところに意外性があって、唯川さんの巧さが出ているところであると思った。

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