« 隠し砦の三悪人 | トップページ | ゆったりしているのに速い »

2010年3月 6日 (土)

お金はどこに移動するか

 土曜日に新聞を読んでいると毎週、家電量販店の広告が掲載されている。前面に出ているのはまずテレビで(今や薄型と言う必要もない)、それからパソコンとデジカメである。テレビは安くなったうえにエコポイントが付いている。インチ1万円と言われた時代からすれば著しい値下がりである。パソコンもデジカメも同様である。
 商品の価格がどんどん下がっている。今は特にその傾向が激しいが、工業製品の場合には一般的に言える傾向である。需要が増大してたくさん売れるようになると競争が激しくなり、売価が下がっていく。メーカーの方から見ると、たくさん生産することによって原価が下がっていくので一定範囲の値下がりは吸収可能である。しかしながら、グローバル化によって情報の流れや企業活動のスピードが増すと、新しい製品の普及スピードが驚くほど速くなり、「儲かる」期間が短縮されるのである。経済の構造がこのように変わってくると、新規事業への参入の時期が決定的な意味を持つ。早く投資した資金を回収してしまうと、そこからが儲けの時期なのだ。そこで儲けて、また次の製品での競争に入っていくわけだ。
 こうやって考えてみると、利益を上げることが容易ではなくなっていることが分かる。需要があれば資本は回転していくが、内需が細っている現状は企業の行動が萎縮させ、思い切った投資を抑制する。そうなると、需要の大きな海外市場を目指して資金を移動させる行動をとる。国外から利益を吸い上げるのである。これによって一部の企業は劣化した業績を補てんする。その一部は限られた範囲で労働者に還流するだろうが、大半の層には恩恵はない。また、サービス業へと移動してしまった労働者には全く影響はない。日本では、バブル経済の崩壊があり、そこに失政が追い打ちをかけ、グローバル経済が押し寄せた結果、浮上の機会を逸したのである。他の先進国に比べても、より厳しい状況にあると言っていいだろう。
 とはいえ、他の国も長い目で見れば同じような結末を迎えるに違いない。成長は無限に続くのではない。停滞し始めると、他国の労働者の成果を吸い上げるか(空間的解決)、自国の労働者に借金をさせて需要を創るか(未来の労働の先食いという意味で時間的解決)の方策に流れることになる。しかし、初めに述べたようにそれも多くの利潤を生まなくなるので、どこにお金が向かうのかというと、言わずと知れた「投機」である。少しでも儲かる金融(派生)商品があれば、一瞬のうちに移動する。これはグローバル化が、制度的にかつシステム的に可能にした。加えて、化石燃料などの鉱物資源や農産物の商品市場にお金があつまる。これ自体がまた金融派生商品に組み込まれているのだが、資金が集中することによって変動はあっても長期的には相場は上昇を続ける。そして経済のかく乱要素として君臨するのである。
 工業生産のスピードは上がっても、農業のスピードには変わりがない。収穫までは決まった時間が必要なのだ。また、鉱物は埋蔵量において有限なものである。これらの有限性が、さらに資金を呼び込むことになる。工業が社会を飛躍的に発展させる力になったのだが、それが魅力を失っているのである。ポストインダストリアル社会と言われるのは、そういう現象を指している。これからの時代は、情報社会だとか、知識社会だとか、知財社会だとか、人が価値を生む社会だとか言われる。どの表現が適切か分からないのだが、よく考えてみると、情報システムを握った者、知的財産を独占した者が力を持つだろうし、他方では資源を支配する者の発言力が圧倒的に強くなる時代がやってくるのは間違いない。
 しかし、一部の人間や国家によってコントロールされた世界は、著しくバランスを欠いた社会になることは必至で、民主的な制度やシステムで対抗することによって多数の利益を守らなければならない。

« 隠し砦の三悪人 | トップページ | ゆったりしているのに速い »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 隠し砦の三悪人 | トップページ | ゆったりしているのに速い »