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2010年3月14日 (日)

2010年難関国立大入試結果分析

 今年度の国立大学の前期試験の発表が終わり、例年のごとく一部週刊誌によって高校別の合格実績が発表されている。私は受験評論家でもないし、受験の仕事にも全く関係していないが、興味だけはあるので独断と偏見で結果を評価してみたい。なお、大阪在住なので関東など他地域の高校に関する情報はほとんど持たない。関西の高校に対するコメントに終始するだろうことは事前に断っておきたい。

 まず、例年のことではあるが、驚嘆に値するのは、灘高校の内容の濃さである。東京大学理科Ⅲ類への合格者数が21名、京都大学医学部医学科への合格者数が23名。合わせて44名いることである。ちなみに、大阪大学の医学部へも13名合格している。できる生徒がすべて医学部を受験するわけではないが、特に理Ⅲへは全国でもトップクラスの成績の者が集中すると思われるので、ここでの結果がその高校の学力の象徴すると言ってよい。灘に続くのは、東京の女子高である桜蔭の8名で、以下ラ・サール6名、開成5名と続く。これを見ると女子の秀才が桜蔭に集まっていることがよく分かる。京都大学の医学部の内訳をみると、灘以下は東大寺学園の15名、甲陽学園の9名、四天王寺の5名と続く。これは関西における中高一貫私学の評価と一致する。一番できる子は灘へ。灘には少し届かない子と、できるが通学の便などを考慮した子どもは東大寺へ。灘には少し不安のある子は甲陽へという流れがある。学校の教育指導のノウハウもあるが、この領域に関しては地頭レベルでの差がストレートに反映していると考えられる。

 まずは灘のすごさに触れたが、これからは東京大学と京都大学への合格者数を見ながらいくつかの私見を述べたい。東京大学では、開成が154名と前年の落ち込みからやや持ち直した。2007年と2008年が良すぎたのだと言えるだろう。以下、灘97名、麻布82名と続く。卒業生の人数から考えると、やはり灘の数字が際立っている。ほぼ2人に1人が東大に進むことになる。これは灘出身の知人から聞いた話であるが、おそろしくできる伝説的な生徒がどの学年にもいるという。数学オリンピック、物理オリンピックで金メダルを取ってくるのは珍しい出来事ではない。学校が知らないうちに申し込んで、学校もメダルの獲得を知らなかったという話があるらしく、それが珍しいことでなくなっている事実を物語っている。知人は、こういうやつにはどう頑張っても勝てはしないと言っていた。また、麻布出身の先輩がいるが、この人は麻布では成績が上位だったわけではないが、私の知る範囲では特に頭の切れる部類に属する。ジョークの間や質も含めて非常に回転の速い人だった。麻布と灘は生徒の質や校風において似通った学校である。
 その他の高校では東京、神奈川の私学が続いている。ここの情報はほとんど持たない。それ以外で注目されるのは、例年の現象であるが愛知県の公立の強さである。岡崎、旭丘、一宮、時習館などである。愛知には有力な私学は東海高校しかない。これは公立高校での進学指導が充実しているからである。ある意味、保守的な基盤が強く、旧来の体制をかたくなに守っていると解釈できる。なかでも岡崎高校の実績は抜群で、三河の秀才が集う学校になっている。
 ラ・サールは長期的に見て、低落傾向にある。雑誌でも触れられていたが、かつては九州一円や本州からも秀才が集まり、寮生活をしながら東大を目指すという高校だったが、各地に有力な私学が登場したために魅力が失われたのだろう。中学校からの寮生活は親としては心配だし、飛行機で行き来するのも煩雑である。逆に、独立心が養われてよいという見方も可能ではあるが。

 京都大学に目を転じると、記事のネタになるのは、洛南高校の合格者数一位転落であろう。西大和学園を1名下回り、19年連続首位の座から転落した。学校関係者にとっては残念な結果であろう。とはいえ、これは年度の変動のなかであらわれる現象なので19年もトップだったことが不思議なほどである。近年の傾向を見ると、洛南・西大和学園・甲陽学院・東大寺学園の4校が拮抗してきており、ビッグ4と呼んでいいのではないかと思う。ここには、東大寺と甲陽が東大最重視から関西難関校重視へとシフトしている傾向が見てとれる。学歴社会の変容と経済情勢の変化が原因として上げられるだろう。なお、かつて洛南と首位を競っていた洛星高校が実績を落としている。理由は違うが、現象としてはラ・サールと同じように見える。また、大阪の星光学院にも似た傾向が見られる。この三校を貫く共通点は、キリスト教の教団が経営していることにある。たまたまかもしれないが、キリスト教における人材育成の考え方と何が何でも難関大学へ入れるという考え方がマッチしないのではないかと勝手に解釈する。

 最後に、息子の関係で京都の洛南高校の結果には注目しているが、今年はいろいろな面で昨年からの後退があった。東大合格者は29名から14名へ、京大合格者は105名から83名へ、大阪大学合格者は52名から21名へと大幅に減少している。また中身について見てみると、東大理Ⅲは6名から1名へ、京大医学部医学科は11名から3名へと減少し、最優秀層が大きく減ったことを意味している。端的に言えば、去年の学年に優秀な生徒が集まっており、ことしは例年通りであったのである。それほど学年によって差が出るということなのだ。それは、学年担当の力量の差もさることながら、入試の日程や科目等の変更によって志願する子どもの流れが変わることを物語っている。少子化によって地頭の良い子を集めることが年々困難になるなかで、各校とも知恵を絞らなければならなくなっているのだ。難関校の合格者を競うことを社会的に評価してみると、もっと他のことに資源を投下すべきとの見解が生れるが、各校の経営的視点から見ると、合格者数という結果は企業で言う決算書の最終利益に相当する数字かもしれない。

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