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2010年1月30日 (土)

プロ論

 プロとは、特別な能力や技術を身につけており、そのことでお金を稼げる人のことを言う。加えて、その能力や技術に自負を持っており、お金をもらう仕事に対しては決して手を抜かないのがプロの特長である。
 美空ひばりは文字通りプロの歌い手だった。歌の技量が飛びぬけて高いことがその最大の根拠であるが、お客様に質の高い芸を披露することにかける意思と意欲の強さは他の追随を許さなかった。残念ながら生で歌を聴くことができなかったが、生前はテレビで、逝ってからは残された映像でその素晴らしい歌唱を聴くことができた。晩年は肝炎等の病気に苦しんだが、点滴を受けながらでも舞台ではシャンとして歌い切り、楽屋に戻ってまた倒れたという逸話が残されている。お客様の前では無様な姿を見せられないのがプロなのである。
 他の分野でプロの中のプロと言える人物がいるだろうか。野球では王貞治とイチローを上げたい。ともにプレーに対するひたむきさが半端ではない。自分の限られた才能と時間を野球以外のことにはほとんど使わず、ひとつの道に打ちこんでいる姿が凛々しい。自分にはできないことだけに尊敬の念を抱く。
 そのほか、伝統芸能や工芸の世界にも素晴らしいプロがいると思うし、実業の世界にもいる。それぞれに、才能があり、個性があり、信念がある。人間というものは極めれば凄いことができるのだと感心することがあるが、プロは皆そういう道を選んでいる。それは、選択と引き換えに、大きな犠牲をも選んだことになるのだ。

 何かを手に入れることのできる人間は、何かを捨てることのできた人間である。

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