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2009年9月 5日 (土)

営業の極意

 もう亡くなってから5年になるが、ときどき父のことを思い出す。父は、ある農業関連の団体で自動車の販売を仕事にしていた。成績は非常に優秀だったようで、ディーラーから感謝状をもらったりしていた。商談のためであろう、地方のサラリーマンとしては帰りが遅く、また朝も早かった。事務所に一番乗りすると気持がいいと言っていた。
 父と私は多く会話を交わす方ではなかったが、仕事に関する話を聞かされることがあった。そのなかに、今思い出してもなるほどと頷いてしまうことがある。私の出身地は海沿いではあるが背後に山が迫っており、広い平野のない地域である。したがって、その限られた土地に集落が分散しており、一つ一つが一定の独立性を持っていた。父が言うには、その集落(地区)で周囲の信頼の厚い人物と親交を持つことが営業の大きな武器になるらしい。「あいつの言うことなら間違いない。」と思われている人物である。○○さんもこの車がいいと言っていたというと多くを説明しなくても買ってくれるらしいのだ。地域のキーマンを押さえること。これは地方での営業の極意と言えるだろう。
 都市部では地域のつながりが薄いので同じようにはいかないだろうし、地方も変わってきている。とはいえ、地縁以外にも様々な人のつながりはあるので、そのなかでのキーマンをつかむことは有効な手段となるに違いない。
 最後にもう一つ。父は禿げていた。電話をかけるとき、「わしや。頭の薄い男や。」と枕詞のように言っていた。父は禿げていることもネタに使っていた。自分をどうやって売りこむか考えてそうしていたのか、自然に出ていたのか知らないが、通常はマイナス材料になることをトレードマークとして使ってしまうのだから大したものだ。父の葬儀には、会館を埋め尽くすほどたくさんの人が参列してくれた。どうやって生きてきたか、分かる瞬間だった。

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