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2009年8月 9日 (日)

悪い奴ほどよく眠る

 1960年制作の黒澤作品である。DVDを購入し、今日鑑賞した。「七人の侍」より6年あとで、「天国と地獄」より3年前の映画だ。土地開発公団と建設会社とが関わる贈収賄事件の首謀者たちに対して、かつて汚職事件のもみ消しを図るために自ら命を絶ち犠牲となった官吏の息子が復讐劇を演ずる。息子役の主演が三船敏郎である。

 汚職事件では、首謀者である組織の上層部には捜査の手が及ばず、中間の官吏が追及され、果ては口封じのために自殺を強要されるという終末がある。これは小説や映画だけの話ではなく、実際にも起こっていることである。犠牲者の陰で、枕を高くして眠っている巨悪の存在を摘発するのが狙いのように思われるが、黒澤の作品を見る場合にはそんな理屈は要らないのかもしれぬ。一級の娯楽作品は変な理屈抜きに楽しめばいいのだ。

 七人の侍は、私なりに組織論としての解釈を試みた作品だ。どうやって人を動かし、敵に勝利するか、ヒントになる要素を探しながら見たのである。それはそれで意味があり、面白かったが、ひとつの娯楽作品のなかにそういう厳格な要素を探求するのは無理がある。そういう要素はあるのだけれども、それを訴えるのが映画の目的ではない。だいたい、そんなに理屈っぽかったらヒット作品にはならないだろう。経験的に分かっている要素を散りばめて、あくまで映画を面白くするためのネタとして使っていると考えた方が自然である。

 黒澤映画は、理屈抜きに面白い。先ほど上げた作品の他に、「生きる」「赤ひげ」「野良犬」「用心棒」「酔いどれ天使」を見ているが、いずれも甲乙つけがたい。比較的上映時間の長いものが多いが、退屈するカットはなくてあっという間に結末を迎える。上等な小説も同じだが、時間の経過を忘れさせてくれるのが良い作品の特長である。

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