« 愛読書 | トップページ | 本当にすごいやつ »

2009年6月28日 (日)

大局観

 ニュース番組にはコメンテイターという立場で事件、出来事に対し自分の見解を述べる役目の人が出演している。レギュラーとして置いている場合もあるし、ゲスト出演として何人かで回している場合もある。これは、司会者の見解だけでは見方が偏るということもあるし、司会者の見解は局の考え方として捉えられるので一定の制限を受けてしまうという事情もあるのではないかと考えられる。もっとも、直接的な狙いは、人気のある学者や評論家を出させて視聴率を稼ぐことにあるのだろう。

 そういう人たちのコメントを聴いていると、ありきたりで、それなら私でも言えるような中身だと思うこともあれば、なるほどそういう見方もあるのかと感心させられることもある。概して、前者の方が多い。事件に短絡的に反応するだけなら一般人でもできることで、多くの視聴者に向かって発言するなら、広い視野で、ある程度のデータも踏まえて発言すべきであると思う。例えば、殺人事件が起こり、そのやり方が凶悪で、しかも容疑者が少年だったりするとニュース性が高まり、番組で取り上げられることになるのだが、「いやあ、怖い世の中になりましたね。少年の心に何が起こったのか分かりませんが、二度と同じ悲劇を生まないために社会は真剣に考えなければなりません。」程度のコメントなら、あってもなくてもいいようなものである。もっとも、報道の中身が薄っぺらだとコメントのしようがないという事情もあってコメンテイターだけを責めるのは理不尽かもしれない。とはいえ、過去に類似した事件もあろうから、日頃から世の中の出来事に敏感であれば言い方はあるはずである。データから見れば青少年の凶悪犯罪は件数としては増えていないとか、質的にはこういう変化があるとか、社会的な背景として携帯電話やインターネットの普及が考えられるとか、地域社会における人間同士の接触の機会が減少しており原因としてはこういうことが考えられるとか、悩んでいる青少年へのカウンセリングの体制の問題があるとか、親の所得格差が少年達の生活格差を生み彼らの間に心の溝を作っているのだとか、そういう見方が加わるべきである。そういうものを付加価値という。

 近ごろ、大阪府の橋本知事や宮崎県の東国原知事の動きが頻繁に報道されている。知事たちの間で、地方に権限を委譲させるために政策連合を組み、総選挙に影響力を持つことによって政権党に圧力をかけようとする動きが強まっている。橋本と東国原は個人的な思惑も加わってか、積極的にその運動の宣伝役を買っている。これに対し、報道ステーションに出演していた日本総合研究所会長(他に多摩大学学長など多くの顔を持つ)の寺島実郎が、こういう趣旨の話をした。「中央対地方の構図を作り出し、マスコミを利用して選挙民に宣伝して、地方に権限を分捕ってくる動きを取っている。地方分権の課題はあるにしても、日本の現状を見ると中央政府が国家戦略を見失っており、国際政治の場で相対的に力を落としているので、中央の立て直しが重要課題になっている。そのような時に地方が強化されれば、さらに中央政府の弱体化が進むだろう。知事とはいえども、日本を支える政治家であるから、自分の行動が国民の将来に強い影響力を持つことを自覚して、目先の課題のために奔走することを自重すべきではないか。マスコミも彼らの行動を持てはやして、ことさら煽るようなことをしてはならない。」これを聴いて、真っ当な意見であると思った。私も、それまでは東国原らの動きを、かなり興味本位で見ていたのは確かだ。こういう指摘を受けて、司会の古舘伊知郎は少々渋い顔を見せていた。

 結論。大局的にものを見ることが大事だ。その時々の目先の課題(これそのものが意図的に作られていたり、焦点がぼけていたりする)に囚われて、基本的な方向性を誤ってはいけないのである。

 

« 愛読書 | トップページ | 本当にすごいやつ »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 愛読書 | トップページ | 本当にすごいやつ »