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2008年9月15日 (月)

高校野球指導者の体罰

 智弁学園和歌山高校の野球部監督である高嶋仁氏が、部員への暴力行為で謹慎処分を受けた。その報道を耳にした時、あの監督ならやるかもしれないと思ったと同時に、その程度(選手の足を蹴った)のことなら大騒ぎすることもないのにと受け取っていたのだ。

 しかし、よくよく考えれば、名監督として名をとどろかせている人だけに安易な解釈は避けるべきだと考え直したのだ。まずは、基本として暴力は許されない。体罰という言葉で免罪しようとしても、それは一方から見た解釈であって、立場を離れて行為の素を見れば、やはり暴力という言葉しか残らない。厳に戒めるべきである。

 ここまでは一般的な話である。次は、智弁和歌山の野球と高嶋監督の問題である。高嶋監督は甲子園で通算56勝を上げている。もう少しで元PL学園の中村監督の通算勝利数を上回ろうとしている。彼におごりと焦りはなかっただろうか。この夏の勝利インタビューを聴いていておやっと思ったことがあった。それは、それほど大差で勝ったわけでもないのに、楽に勝てたという趣旨の発言をした時である。多少の違和感を感じながらも、ベテラン監督になるとそこまで読めるのかと思ったが、事件があってから思い返すと、少々過信していないか、勝負にこだわり過ぎていないかという疑念が湧いてくる。彼にとっては甲子園にチームを連れて行き、それなりの戦績を残すことが「仕事」になっているのだ。

 智弁和歌山では、一学年の部員が10人に限られ、県外生は二人までに限られている。これにはいろいろな解釈が可能だろうが、毎年確実な成績を上げるのに都合のよい仕組みだと考えられないだろうか。選手が多過ぎては指導が行き届かない。下級生に公式戦の経験を積ませれば、毎年一定のレベルを保つことができる。和歌山には他に強い私立高校がないので、県内の中学から優秀な選手を集めてしまえば、公立高校の戦力は落ち、甲子園への道は極めて短くなるのである。そうやって勝つためのシステムを学校と監督とが作り上げたのではないか。智弁和歌山は今や関西屈指の進学校となったが、そこに果たした野球部の貢献は計り知れないものがある。いつしか、謙虚さが消え去り、俺が甲子園へ連れて行っているのだと考えるようになった。選手のための甲子園ではなく、監督のための甲子園になってしまった。

 しばらくの謹慎期間を経て、また監督に復帰するだろう。そして中村監督の記録を破ってから引退することになる。ここまで肥大化した高校野球は簡単に方向転換することができない。多くの利権も絡んでいるらしい。これに比べれば、まだ大相撲は変わることができるように思えてしまう。日本においては、実は高校野球が国技であったのかもしれない。

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コメント

>もう少しレベルの低い生徒も取ってあげたらどうでしょうか。

高嶋監督は、野球の上手な子だけではなくて、
選手の気持ちを大事にする監督なので、
野球が下手でも、気持ちの強い選手をとったりします。

>毎年確実な成績を上げるのに都合のよい
ただ単に強いチームを作りたいだけなら、
特待生無しで地元主体でやってないと思います。
手っ取り早く強いチームを作るには、特待制度で
いい選手を全国から集めて野球をするのが一番早いと思います。

>スポーツで知名度を上げ、そこから進学校に
転身していくというのが私学の成長戦略の一つ
智弁は違うのかもしれませんが。

智弁は、地元で進学校として有名でした。
元々偏差値の高い進学校です。
野球部は、あとから作られ、ここまで有名になるとは
誰も思っていませんでした。

個人的に高嶋監督には、長く続けて欲しいです。
市和商、県和商も頑張ってます。

 ご意見ありがとうございます。滅多にコメントなどいただけないのでうれしいです。
 高嶋さんは気をつけるべきでしたね。練習試合だったらしいから近いところからの告発だったのでしょう。暴力には世間も神経質になっている時期ですから気をつけるべきでした。
 私は和歌山に近い三重出身なので、和歌山の野球にはいつも注目しています。高嶋さんの力が大きいのでしょうが、少し目立ち過ぎで、市和商、県和商、箕島、南部、そして郷里に近い新宮、新宮商業などにも頑張ってほしいものです。ちなみに、私の出身の三重の町から智弁の野球部に行っている男の子がいます。もちろんその子を応援しています。それから私の従兄弟は奈良の智弁の投手でした。
 言いたいのは、智弁和歌山が別に憎いわけではないということです。しかし、どうも力づくのような気がします。10人制には高嶋さんの哲学があり、スポーツコースの定員の関係もあるのでしょうが、もう少しレベルの低い生徒も取ってあげたらどうでしょうか。下手くそな人間の気持も分かれば謙虚になれるのではないでしょうか、
 智弁の進学実績と野球部の関係については自分の記憶に頼ってそう思いこんでいました。正確なところはデータがないのでわかりません。智弁の開校が78年で、野球部の初優勝が94年ですから、そこまで遡らないと検証できません。一般論で言えば、スポーツで知名度を上げ、そこから進学校に転身していくというのが私学の成長戦略の一つです。智弁は違うのかもしれませんが。
 さて、こうなったら智弁の選手たちも意地を出して、秋季大会で勝ち残り、選抜に行って欲しいものです。私は同郷のA君を応援します。夏にベンチに入っていたからレギュラーで出場することを期待してます。最後に、高嶋さんへ。常総の木内さんみたいな年まで無理に頑張らず、あと3年ぐらいで勇退してください。それまでには中村さんの記録は破っているでしょう。元気余って、足を出さないように。
 

智弁和歌山は、少人数で地元主体、特待生はいないです。
和歌山は、日高中津も強いです。
智弁は、野球部が有名になる前から地元の進学校です。勝負にこだわることは、別に悪いことではありません。選手のための甲子園です。
監督は、勝てたのは、選手のおかげと言ってます。

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